2006年02月13日

ホテル・ルワンダ

hotel_ruwanda.jpg

9点

あらすじ

フツ族とツチ族の間で続いていた内戦が終息、和平協定が結ばれようとしていた1994年、ルワンダの首都キガリ。外資系高級ホテル、ミル・コリンの支配人ポールは、近くフツ族の民兵によるツチ族の虐殺が始まるという噂を耳にする。やがてフツ族大統領暗殺の報道がなされ、フツ族が武器を片手にツチ族を襲撃し始めた。フツ族のポールは、ツチ族の妻・タティアナと息子たち、そして隣人たちを守るため、ホテルに匿うのだが……。

監督 テリー・ジョージ

出演 ドン・チードル
ソフィー・オコネドー
ニック・ノルティ
ホアキン・フェニックス

(以上、goo映画より抜粋)

あらすじを補足すると、主人公ポールはまったく武器を持たないホテル内の人間を、ホテルのすぐそばで虐殺を続けている民兵から守るために、ありとあらゆる手を尽くします。超一流ホテルマンである自らのコネを最大限に生かし、有力者たちに泣き付き、今生の別れを告げて揺さぶり、賄賂を贈り、それこそ、出来ることのすべてを尽くして自分たちの生命を守ろうとするのです。
なにもしなければフツ族である自分は殺されずに済むというのに、家族を守るため、自分を頼ってきたツチ族たちを守るため、民兵たちに憎悪されながらも戦うのです。
これ以上の内容は、ぜひ劇場でご覧になってください。


感想
(以下文中で映画内と同じ表現でツチ族を表すことがありますが、当然映画自体と同じように、差別の意図はまったくありません)

見ると心が打ちのめされます。重い話が苦手な人は避けるべきです。
一面でこの映画はポールの英雄譚ではあります。
しかし、その英雄譚の舞台では、百万に及ぶ大虐殺が実際に行われてしまっています。
ポールが、虐殺映像を撮ってきたカメラマンに向かって言った「これを世界に配信してくれれば世界各国が救援を向けてくれるでしょう」と言う言葉に、カメラマンは苦渋の表情で返答します。「世界の人々はあの映像を見て──“怖いね”と言うだけでディナーを続ける。」

ここまでさらけ出すのもなんですが、僕は良く考えた末で、「俺には本格的なボランティアは出来ない。出来ない以上身近な人間だけ幸せにすることに全力を尽くせばそれで良い」
そういう考えを持っています。
しかし、この虐殺の事実を見て、「“怖いね”と言うだけでディナーを続ける」人間の一人なんだということを突きつけられて、胸が、苦しくなりました。
考えを曲げることも出来ませんが、言い訳さえ、いっさい浮かびません。

以下、長くて重くてあまりネタバレでない感想と、ネタバレで簡単で軽い感想という順で続きます。ネタバレ嫌な人は文末の方は見ないでね。

この映画から僕は三つのテーマを感じました。
一つ目は、個人の資質。
ポールはまさに英雄と言っていいでしょう。
超一流ホテルマンではあるが、人間としては普通の男であったポールが、最悪の事態に際して英雄的な働きをする。
限界状況に際して人間の本当の資質が見えるという、生々しい事実がそこにあります。

二つ目は、人間の本質。
隣人として暮らしてきたフツ族とツチ族が、社会状況の変化から憎み合うように操作され、ついには多数派による少数派への一方的な大虐殺にまで及んでしまう。
夫婦となったポールとタチアナを見ても、個人として知り合っていれば普通の人間同士であるはずなのに、部族差別を社会制度として盛り込み、ラジオなどのメディアで「ツチ族のゴキブリ野郎ども」と連呼し続けることによってここまでの事態が起きてしまう。
「ツチ族のゴキブリ野郎ども」という言葉には意味があるんです。
人間が人間を比較的気軽に殺すためには、いくつかの方法があるようです。
戦争でよく使われるのが、「相手を人間とは思わない」ことらしいです。
チェチェン紛争に送り出されるロシア兵が、着任する前からチェチェン人を憎むように教育される、という話を聴いたことがあります(ソースなし情報です)。
この映画の中で、フツ族民兵は「ツチ族のゴキブリ野郎ども」と何度も口に出します。
ラジオが繰り返し、友が繰り返し、家族が繰り返す。
そうすれば、事実は違っても、相手は人間ではなくゴキブリになる。
人間と言うものの脆さと恐ろしさを感じずにはいられません。

三つ目は、社会の現実。
この映画を見てどうしても感じてしまったのは、ホテル「ミル・コリン」で助かった人々のほとんどが、いわゆる上流階級の人々であったことです。
主人公ポールは、ベルギー資本で国内最高級ホテルの現地人トップである人間だし、大半の人間はもともとミル・コリンに宿泊していた、もしくはミル・コリンの存在を知っていて近くに住んでいた人間です。ちなみにミル・コリンの宿泊費はルワンダの平均年収の半分ほどもするそうです。
その他の人々は、逃げ場も無く、作中に現れていたように引きずり出されて殺されていった、ということなんでしょう。
もともとポールが理不尽な差別から自由であったのも、高水準な教育を受けて高い教養と知性を身に付けていたという事が大きかったと思います。
そこには持つ者と持たざる者の、冷然とした違いが表れています。

また、この映画を見てネット上でルワンダ虐殺の歴史について調べてみました。
いくつか見ましたが、以下リンク先の文章が参考になりました。

http://c-cross.cside2.com/html/bp0ri001.htm

この映画の中で、救世軍のようなツチ族の武装勢力RPFにしても、もともとはルワンダで独裁政治をしていて追放されたグループであるかもしれないのです。

そして、同じところに住み、同じ言葉を喋り、同じ宗教を信じ、人種間結婚も行われ、歴史家や民俗学者たちが完全に異なる民族集団ととらえることはできないとされているフツ族とツチ族に、お前たちは違うんだという意識を与えたのは、植民地支配をしていたドイツ・ベルギーだったと考えられているそうです。
効率的な支配のために、比較的ヨーロッパ人に似た顔立ちのツチ族を上位として取り込み、フツ族を下位とすることでツチ族に特権意識と利権を与え、支配させる。
20世紀前半の一部の人間が考えたことで、こんなに多くの憎しみと死が出来上がってしまった。
これが、この世界の現実であると再認識させられて、暗鬱とした気持ちになります。


そんな中で、ポールの行動が世界中の人々の感動を呼ぶ。
そこには、光を感じられると思うんです。
えらいよ、ありがとうポール。



さらに以下に、超級ネタバレ上等で簡単な感想を書きたいと思います。
まだ続くんかい(自嘲)。


ネタバレ注意↓
ネタバレ注意↓
ネタバレ注意↓
ネタバレ注意↓
ネタバレ注意↓
ネタバレ注意↓
ネタバレ注意↓
ネタバレ注意↓
ネタバレ注意↓
ネタバレ注意↓
ネタバレ注意↓
ネタバレ注意↓



僕が泣いちまったのは以下です。
救援に来たと思われた各国の軍隊が自国民だけを収容してミル・コリンを離れるときにポールがやりきれない表情で見送るところ。
それまでのポールの尽力を考えると堪らなかったです。国連軍の大佐の気持ちも考えると、やはり堪らなかったです。

一番胸を打たれたのは、ポールが自分は脱出できるのにギリギリで家族だけをトラックで送り、自分は残ったところ。
これはやられました。ポールが最初から「家族を救うことがすべて」と思っていたことが明示されていたし、物語が史実なだけに、残らないだろうと思っていました。
自分とともに地獄を乗り越えてきた人々を、そして自分を頼っている人々を見捨てられなかった。残ることは、死を意味するのに。なんの希望も無かったのに。
これには泣きました。
国連軍の大佐の尽力も良かったですね。ヤツも漢ですよ。


反面、物語が良く出来すぎている気もしてしまいます。
ノンフィクション、とされる映画を見るといつも作為を疑ってしまうんですよね。
まぁ、どうしたってある程度あるでしょうが…。

ああ、あと家族がやっと脱出できるというときに、「裏切り者のルセサバギナが逃げようとしている!!」とラジオで流れたときは全身に痺れが走りました。
あの若いクソ従業員はほんとにむかつきますね。まぁフィクションかもしれんけど(苦笑)。
posted by すっしー at 02:21| 東京 ☀| Comment(2) | TrackBack(4) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちわ。jesterといいます。「ホテルルワンダ」の感想をよまさせていただきました。ありがとうございました。
私も先日見てきたのですが、いろいろ考えさせられる映画でしたね。私も感想を書いたので、TBさせていただきました。
Posted by jester at 2006年02月13日 14:18
>jesterさん
コメントありがとうございます。
本当にとても考えさせられる映画でしたね。
jesterさんの感想も拝見しましたよ。
感想はそちらのブログに書かせてもらいますね。
Posted by すっしー at 2006年02月14日 00:28
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